第8章 『君は僕の輝ける星』

次に目覚めた時、そこは見覚えのある場所だった。

『ここは・・・・ETUの医務室・・・か?』
そう思ったのも束の間。
「気がついたわね、後藤さん。この声が聞こえる?」
「はい・・・・」
医療スタッフの女医が自分を覗き込んでいる。
なぜここに・・・と思った瞬間、思い出した。

『そうだ。グラウンド周ってる時に、記憶が戻って・・・』

そこで周りを見回すと、達海と目があった。
やはり、居てくれたのか。
どうやら今回は記憶を失ったりしてないようだ。
思い出したことも、ちゃんと覚えている。
そのことにほっとしつつ、彼に声を掛けた。
「達海。ゴメン、お前がここに連れてきてくれたのか?」
「!!ごと・・・オレが、分かるのか?」
そう尋ねる達海はまだどこか半信半疑のように問いかける。


「・・・ああ。今回は失ったりしてないし・・・・記憶、戻ったよ」


「な・・・!ほ、本当か?」
「本当」
「それは良かったわね」
 女医はこちらを見てにっこりと微笑んだ。
「もう少し、目覚めるのが遅かったら救急車を呼ぼうと思ってたところよ」
「ああ・・・出来ればもう乗りたくないですね」
 あっさりと言われた台詞に、後藤は苦笑するしかない。
「とりあえず、今日はもう帰宅命令を出しとくわ。明日にでも病院へ行きなさい」
 そう言って、有能な女医は早々に後藤を解放してくれた。



          ◆◆◆



 その日の夕方、後藤は達海を連れて、自分の家へ帰宅した。
「ああ、やっぱり違って見えるもんなんだな」
「そーなの?」
「うん。部屋の場所とか知ってるのに、どこか自分の家じゃないような妙な感じだったんだ。
でも、今は完全に実感を伴ってる。」
 そう話しながら、自分の部屋へと移動する。
 壁に貼ってある、一枚のはがき。
 手に取ると、連れ戻しに行った時の記憶がちゃんと蘇る。
「あ。お前そのはがき、まだ貼ってんの?」
「勿論。俺の宝物だし・・・な」
 そう言いきって達海を見ると、少しうろたえたようだった。
 ここで、きちんと達海に向き合って言葉を告げる。
「達海、お前の記憶を失ったりして、ホントにすまない」
「!」
「色々と迷惑掛けたし、お前のことも傷つけたと思う」
 達海は後藤の言葉を聞いて、苦い表情になる。
「そんなん・・・お前のせいじゃねーし、そもそもオレを助けた結果だろ」
「ああ。だから、その行動には後悔してないし、何度やっても同じ結果だろう」
「・・・・・・・・少しはしろよ。・・・なんでだよ・・・」
「ゴメン。でも・・・何でかは、今のお前ならもう・・・分かってるんだろ?」
 記憶を失う前なら、きっと永遠に告げられなかっただろう。
 でも、もう知られてしまった。
 もう、知ってしまった。
 後戻りは出来ない。

「・・・・・・なんで?」
「!」
「ねぇ、なんで?」

 しまった。狡猾な罠だったか。
 達海を見ると、真剣な瞳の奥に後藤の答えを期待する光が見える。
 これには苦笑せざるを得ない。
「知ってるくせに。・・・・・聞きたいのか?」
「聞きたい」
「全く・・・・・お前は。・・・仕方ないな」
 いつもの台詞を後藤が言うと、達海の口元がほころんだ。
 達海に一歩近づいて、その距離を縮める。
 手を伸ばし、その茶色い頭をひと撫ですると、軽く力を入れて片手で抱き寄せる。
 達海は大人しくされるがままだ。
 その耳元に口を寄せて、彼の期待通りに告げてやる。


「・・・・・・・どうしようもなく、“お前に夢中”だからだよ」


 すると、達海の手が後藤の背中に回り、抱き締められる。




「・・・・なんだ、オレと同じじゃん」




                           ・・・・・HAPPY END


此処まで読んで下さり、ありがとうございました!
本編はこれで終了ですが、申し訳程度の夜編がございます。(novelに戻ってSS項目参照)
ガッツリERO描写ですので、18禁とさせて頂きますが、ここまで読んで下さったお礼
ということで、ここにパスワードを記しておきます。
『YMOSS54』
18歳以上の同士様にお楽しみ頂ければ幸いです。
また、感想等聞かせて頂けたら嬉しいです。